「総合外科・地域連携学講座」は、2010年(平成22年)から活動してきました地域医療学センター(外科分野)の業務を引き続き兼任しつつ、大分県地域に貢献できる総合的外科医療人の育成、ならびに近年の社会変化に伴う地域外科医療へのニーズに対応していくため、2017年(平成29年)2月に開講(初代教授:白石憲男 先生)いたしました。私は、2023年(令和5年)121日をもちまして、白石憲男先生の後任として本講座を担当させていただくこととなりました。

【本講座の目的】
 1.地域で活躍する総合的な外科知識と技術を兼ね備えた外科医師の育成
 2.地域外科医療の実践における問題点の抽出とそれらに対する方策の立案
 3.総合外科学・地域連携学という新しい学問体系の構築

 日本では、外科医は減少し続けています。その理由として、外科医として一人前になるのに時間を要する、多忙かつ勤務時間が長いためワークライフバランスが悪い、勤務量に給与が見合っていない、女性外科医への配慮が乏しい、さらに医療訴訟のリスクが高い、等が挙げられています。果たして本当にそうでしょうか?本当にこれらの理由だけで医学生や若手医師から外科は敬遠されているのでしょうか?

2010年に私たちが行ったアンケート調査では、「手術」や「救急」といった業務に携わる時間が長い外科医ほど満足度が高いという結果でした。当たり前かもしれませんが、外科医は「外科医本来の仕事」に専念できる環境を望んでいるのです。医師の働き方改革の本格導入が始まり、「外科医の地域偏在や労働負担増」、「外科医のタスクシフト・タスクシェア」、「外科医の集約化・適正配置」、など様々な課題と対策が議論されています。これらの課題に対して、外科医が本来の業務に集中して行えるようにすることが重要なのではないかと思います。そして、その結果、満足度が高くなり幸せにしている外科医を見れば、必ず医学生や若手医師もあとに続いていくのではないかと信じています。

特に地域医療に従事する外科医には、幅広い視野と知識、そして他診療科や多職種と連携できる人間力を有することが必要不可欠だと思います。本講座では、大分大学内の他講座や地域医療機関の先生方、さらには、医師会や自治体の皆様方と密に連携を深めながら、地域で活躍できる総合的外科医療人の育成と新しい学問の体系化を行い、微力ながら地域外科医療の発展に貢献していきたいと考えています。

今後とも、皆様のご指導・ご鞭撻のほど、何卒お願い申し上げます。

総合外科・地域連携学講座 教授

上田 貴威

総業年度:平成9年
出身高校:大分雄城台高校
出身大学:佐賀医科大学医学部医学科(現 佐賀大学医学部)

主な学会活動:
 日本外科学会(認定医・専門医・指導医)
 日本消化器内視鏡学会(専門医・指導医・九州支部評議員・学術評議員)
 日本消化器外科学会(専門医・消化器がん外科治療認定医・指導医)
 日本胃癌学会(代議員)
 日本内視鏡外科学会(評議員)
 日本臨床外科学会(評議員)
 日本外科系連合学会(評議員)
 九州外科学会(評議員)  
 日本病院総合診療医学会(評議員、総合診療認定医)
 日本消化管学会(胃腸科専門医・胃腸科指導医)
 日本がん治療認定医機構(がん治療認定医)
 日本高齢消化器病学会(学会誌編集委員)
 日本癌治療学会         
 日本プライマリ・ケア連合学会  
 日本医学教育学会
 日本大腸肛門病学会
 日本小児外科学会
 日本医学教育評価機構(JACME) 評価委員

総合外科・地域連携学講座 准教授 

平塚 孝宏 

卒業年度:平成13年
出身高校:西大和学園高等学校(奈良)
出身大学:大分医科大学(現 大分大学医学部)
主な学会活動:
 日本外科学会会員(専門医・指導医)
 日本消化器外科学会会員(専門医・指導医)
 日本消化器内視鏡学会会員(専門医・指導医)
 日本大腸肛門病学会(専門医)
 日本大腸肛門病学会九州支部評議員
 日本腹部救急医学会(認定医)

研究では光線治療やステント開発、臨床では消化管外科、特に大腸を担当しています。
患者さんにできるだけ早く悩みを解決してもらいたいと思っています。
「いまできる最高を目指す」が目標です。
よろしくお願いします。

総合外科・地域連携講座 助教

髙山 洋臣

卒業年度:平成19年
出身大学:大分大学医学部
主な学会活動:
 日本外科学会 専門医
 日本消化器外科学会 専門医
 日本肝胆膵外科学会
 日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
 日本肥満症治療学会

総合外科・地域連携学講座の活動内容

 当講座は、平成29年2月より「地域外科医療を実践するリーダーとしての総合的な知識と技術を有した外科医の育成」を講座のミッションとして、教育・研究・臨床の各領域において活動しています。

≪教育≫

 学内そして学外の両フィールドにて教育活動を行っています。特に、当講座では、外科領域のcommon diseaseに対する診断と治療を中心として、救急外科疾患への初期対応からプライマリケアに必要な小外科的処置まで、臓器別ではなく総論的・横断的な知識が身につくような教育を行っています。

【学内】

3年生・・・総合外科学講義、診療所実習(シャドウイング、総合診療・総合内科学講座との協働)

4年生・・・研究室配属指導、臓器別講座における講義 

5年生・・・病棟実習における外科教育
      (クリニカルクラークシップ、臓器別講座と協働)
      滞在型地域医療実習(2週間、総合診療・総合内科学講座と協働)

6年生・・・マンツーマンのPBL(Problem-based learning)形式の総合外科講義(選択学生)

外来診療のシャドウィング実習

PBL形式の講義

【学外】

地域中核病院と連携して、医療現場における総合的な外科臨床実習を通して地域外科医療の醍醐味を感じることを主としています。

また、臓器別外科講座と共同にて、新専門医制度に対応した「大分大学外科研修プログラム」の企画・作成を通し、外科専門医の育成を行っています。
さらに、教育の一環として、主として研修医や若手外科医を対象とした外科分野のテキスト・書籍の作成を多数行っています。

総合的な外科的知識と基本的技術を持ち合わせ、地域急性期病院や地域包括ケアでのチームの一員として、全人的な診療のできる「地域医療総合外科医」の育成と「地域医療総合外科学」という新しい学問体系の確立に努めたいと考えています。

大分岡病院での学外実習

≪研究≫

以下のような項目について、学会発表や論文化を行ってきました。

1.高齢がん患者に対する外科治療

2.大分県外科勤務医に対する意識調査
①大分県地域の外科医療における病病連携や病診連携
②医療改革や医学教育改革について(医学生との比較を含む)
③外科勤務医のキャリアパス形成
④外科医増加に向けた外科医のイメージ調査(医学生との比較を含む)
⑤外科医の労働環境とやりがいに関する検討
⑥外科医教育・指導に関する検討

3.大分県における救急患者搬送の実態調査

4.術後QOLを考慮した消化管再建法の開発と確立

5.大分県における外科手術の地域格差に関する検討

6.地域外科医療におけるモンスターペイシェントと医療訴訟に関する現状

今後も、大分県の地域における外科的common diseaseに対する治療の傾向調査や、大分県外科勤務医の「働き方改革」に対する意識調査など、大分県地域の外科医療の発展に向けた調査・研究を行っていきます。

≪臨床≫

大分大学消化器・小児外科学講座と共に、消化管疾患ならびに肝胆膵疾患の手術治療・病棟・外来診療、内視鏡検査・治療、および腹部救急外科治療を行っています。また、大分県の地域基幹病院においても、手術指導・協力(30~50件/年)、外来業務支援などを行っています。

〔地域医療学センター(外科分野)の活動〕

当講座は、地域医療学センター(外科分野)も兼務しており、同センター(内科分野、大分県医療政策課)よび臓器別外科講座と協働して、地域医療連携の促進、地域に根付いた外科医の育成、大分県の医療従事者に対する連携支援を行っています。

その活動として、以下のようなものが挙げられます。

◆高大連携セミナー・・・医療に興味をもつ高校生を対象としたセミナー

◆がんプロセミナー・・・大分大学看護学科と共催する地域住民や地域医療従事者を対象としたがんに対する知識を深めるセミナー

◆プライマリケア道場・・大分県の若手医師・医学生を対象とした症候学から学ぶ勉強会

◆大分県地域医療セミナー・・・大分県地域における医療人育成セミナー

◆大分大学地域枠卒業生のキャリアパス相談とコーテイング

◆大分県の医師増加・定着に向けた活動
・レジナビ(九州の医学生に対する大分県のアピール)
・おおいた医師交流会(他県の大分県出身医師への大分県Uターン支援)
・大分県臨床研修医合同研修会(大分県にて勤務する研修医の大分県定着促進
・大分の地域医療の明日を拓く会(大分大学地域枠学生・卒業生の集
・大分県臨床研修病院見学バスツアー
・大分県地域医療研修会(当センター内科分野、大分県医療政策課と共同)

これからも、地域外科医療を担う人材を育成し、大分県地域外科医療に貢献していきます。

高大連携セミナー(講義)

高大連携セミナー(体験実習)

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