「総合外科・地域連携学講座」は、最近の社会の変化に伴う医療へのニーズに応えるため、平成29年2月に開設いたしました。本講座の目的は、地域で活躍する総合的な外科知識と技術を兼ね備えた外科医師の育成、ならびに地域での良質な外科医療の実践のための環境づくり、さらには総合外科学・地域連携学という新しい学問体系の構築です。平成22年から活動してきました地域医療学センター(外科分野)での大分県の地域外科医療の推進役としての業務を兼任しつつ、医療人の育成や研究、ならびに診療など大学の講座としての業務が加わりました。

 ご存知のように、世の中は大きく変貌しています。少子高齢社会の到来、医学の発展に伴う医療の高度化、医療費の高騰などが顕在化するにつれ、国はこれらの変化に対応できる医療制度の確立をめざし、「大学(先進医療、高度急性期疾患)-地域中核病院(一般疾患common disease、急性疾患)-かかりつけ医」の機能分化や地域ごとに必要病床を規定した「地域医療ビジョン」の設定、医療と介護の一体化をめざした「地域包括ケアシステム」の構築など、数々の医療制度改革を進めています。一方、医学教育の分野においても、医学教育の国際化、マッチングによる初期研修制度、専門医機構による2階建て専門医制度、医学部における臓器別診療や研究の推進など、医学教育制度改革も進められています。

 このように数多くの改革が進められるなか、社会が求める医療人の育成には、高度医療や先進医療を実践する専門医の育成と一般的疾患を対象とする総合内科医や総合外科医の育成に二分化されようとしているように思います。これまで、総合外科医の育成は主に地域中核病院で行なわれてきましたが、整然と組織化されたものではなく、地域での外科指導医の不足や地域での外科教育のカリキュラムなど決して満足な状況ではありませんでした。今まさに、地域の基幹教育施設としての大学医学部にその役割が課せられてきたと思います。

 さらに、地域社会の多様化に伴い、地域医療崩壊の改善、超高齢者社会に対応した地域包括ケアシステムの確立、医師の働き方改革、モンスター患者への対応、医療事故などに対するリスクマネージメント、保険制度の適正使用など地域医療において様々な解決すべき社会問題が生じています。このような社会的視点を有した外科医療人の育成も求められています。

 このように、本講座は大学内の臓器別講座、地域で活躍している医療関係者、医師会、行政などと連携を深めながら、社会が求める総合外科医の育成、良質な外科地域医療の実践、新しい学問体系の構築に尽力したいと考えています。外科医、特に若き外科医が地域で生き生きと活躍している社会の実現に少しでも貢献できれば幸いです。今後とも、ご指導・ご鞭撻をお願いいたします。

大分大学医学部 名誉教授

白石 憲男

卒業年度 昭和59年
出身大学 大分医科大学医学部(現在の大分大学 医学部)

主な学会活動
日本外科学会 専門医・指導医・代議員
日本消化器外科学会 専門医・指導医・評議員
日本内視鏡外科学会 技術認定取得医・評議員
日本消化器内視鏡学会 専門医・評議員
日本臨床外科学会 評議員

総合的外科医をめざす医師、外科の地域連携の構築に役に立ちたいと考える医師の育成に尽力したいと考えています。
「やる気・元気・地域!」ー楽しい教室づくりが基本です。来たれ!若き同志たち!

総合外科・地域連携学講座
地域医療学センター(外科分野) 教授
卒後臨床研修センター 副センター長

上田 貴威

卒業年度:平成9年
出身高校:大分雄城台高校
出身大学:佐賀医科大学医学部医学科(現 佐賀大学医学部)
主な学会活動:
日本外科学会 専門医・指導医
日本消化器外科学会 専門医・消化器がん外科治療認定医・指導医
日本消化器内視鏡学会 専門医・指導医・学術評議員
日本胃癌学会 代議員
日本臨床外科学会 評議員

主に消化管外科分野を担当しています。卒業して大分に戻って以来、大分県地域の多くの病院にて地域外科医療に従事し、外科医療の楽しさ・素晴らしさを学ばせて頂きました。これまで私が学んできた地域外科医療の現場では、素晴らしい先輩方が臓器や専門分野に偏ることなく、一人の外科医として、目の前の患者さんの治療にあたっていました。そのような外科医の仲間を一人でも多く増やしたいと思っています

総合外科・地域連携講座 助教

川崎 貴秀

卒業年度:平成16年
出身大学:大分医科大学医学部(現在の大分大学 医学部)
主な学会活動:
日本外科学会 認定医・専門医
日本消化器外科学会 専門医
日本肝胆膵外科学会 評議員

信頼される医師を目指します。

総合外科・地域連携学講座の活動内容

 当講座は、平成29年2月より「地域外科医療を実践するリーダーとしての総合的な知識と技術を有した外科医の育成」を講座のミッションとして、教育・研究・臨床の各領域において活動しています。

≪教育≫

 学内そして学外の両フィールドにて教育活動を行っています。特に、当講座では、外科領域のcommon diseaseに対する診断と治療を中心として、救急外科疾患への初期対応からプライマリケアに必要な小外科的処置まで、臓器別ではなく総論的・横断的な知識が身につくような教育を行っています。

【学内】

3年生・・・総合外科学講義、診療所実習(シャドウイング、総合診療・総合内科学講座との協働)

4年生・・・研究室配属指導、臓器別講座における講義 

5年生・・・病棟実習における外科教育
      (クリニカルクラークシップ、臓器別講座と協働)
      滞在型地域医療実習(2週間、総合診療・総合内科学講座と協働)

6年生・・・マンツーマンのPBL(Problem-based learning)形式の総合外科講義(選択学生)

外来診療のシャドウィング実習

PBL形式の講義

【学外】

地域中核病院と連携して、医療現場における総合的な外科臨床実習を通して地域外科医療の醍醐味を感じることを主としています。

また、臓器別外科講座と共同にて、新専門医制度に対応した「大分大学外科研修プログラム」の企画・作成を通し、外科専門医の育成を行っています。
さらに、教育の一環として、主として研修医や若手外科医を対象とした外科分野のテキスト・書籍の作成を多数行っています。

総合的な外科的知識と基本的技術を持ち合わせ、地域急性期病院や地域包括ケアでのチームの一員として、全人的な診療のできる「地域医療総合外科医」の育成と「地域医療総合外科学」という新しい学問体系の確立に努めたいと考えています。

大分岡病院での学外実習

≪研究≫

以下のような項目について、学会発表や論文化を行ってきました。

1.高齢がん患者に対する外科治療

2.大分県外科勤務医に対する意識調査
①大分県地域の外科医療における病病連携や病診連携
②医療改革や医学教育改革について(医学生との比較を含む)
③外科勤務医のキャリアパス形成
④外科医増加に向けた外科医のイメージ調査(医学生との比較を含む)
⑤外科医の労働環境とやりがいに関する検討
⑥外科医教育・指導に関する検討

3.大分県における救急患者搬送の実態調査

4.術後QOLを考慮した消化管再建法の開発と確立

5.大分県における外科手術の地域格差に関する検討

6.地域外科医療におけるモンスターペイシェントと医療訴訟に関する現状

今後も、大分県の地域における外科的common diseaseに対する治療の傾向調査や、大分県外科勤務医の「働き方改革」に対する意識調査など、大分県地域の外科医療の発展に向けた調査・研究を行っていきます。

≪臨床≫

大分大学消化器・小児外科学講座と共に、消化管疾患ならびに肝胆膵疾患の手術治療・病棟・外来診療、内視鏡検査・治療、および腹部救急外科治療を行っています。また、大分県の地域基幹病院においても、手術指導・協力(30~50件/年)、外来業務支援などを行っています。

〔地域医療学センター(外科分野)の活動〕

当講座は、地域医療学センター(外科分野)も兼務しており、同センター(内科分野、大分県医療政策課)よび臓器別外科講座と協働して、地域医療連携の促進、地域に根付いた外科医の育成、大分県の医療従事者に対する連携支援を行っています。

その活動として、以下のようなものが挙げられます。

◆高大連携セミナー・・・医療に興味をもつ高校生を対象としたセミナー

◆がんプロセミナー・・・大分大学看護学科と共催する地域住民や地域医療従事者を対象としたがんに対する知識を深めるセミナー

◆プライマリケア道場・・大分県の若手医師・医学生を対象とした症候学から学ぶ勉強会

◆大分県地域医療セミナー・・・大分県地域における医療人育成セミナー

◆大分大学地域枠卒業生のキャリアパス相談とコーテイング

◆大分県の医師増加・定着に向けた活動
・レジナビ(九州の医学生に対する大分県のアピール)
・おおいた医師交流会(他県の大分県出身医師への大分県Uターン支援)
・大分県臨床研修医合同研修会(大分県にて勤務する研修医の大分県定着促進
・大分の地域医療の明日を拓く会(大分大学地域枠学生・卒業生の集
・大分県臨床研修病院見学バスツアー
・大分県地域医療研修会(当センター内科分野、大分県医療政策課と共同)

これからも、地域外科医療を担う人材を育成し、大分県地域外科医療に貢献していきます。

高大連携セミナー(講義)

高大連携セミナー(体験実習)

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